051997 ランダム
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waiting for the changes

waiting for the changes

38話:白銀の雪

「・・・後は2機か」
雪が振りしきる中、2機の一風変わったGが多くのGに囲まれていた。一方のGはロングライフルを装備した白いグロリアスだが、左手が赤いシャイニングのものが使用され、右腰装甲パーツが薄い緑のウィンのものが使用されている。もう一方のGは同じように基本は白いグロリアスだが、両腕が薄い緑のウィンのものが使用されたものだった。このツギハギだらけの2機以外に味方は居ない。
「・・・はぁ・・・くっ!」
「大丈夫なの?リナリー!?」
ノルウェー北部。孤立したヨーロッパの傭兵たちはその勢力圏を徐々に狭められていた。北極海から進行したアスロートやアシュラ‐4などの世界政府軍のGの大部隊に圧倒され、一気に崩され、残すは2人の少女が乗るGだけとなっていた。
「一斉攻撃を仕掛ける!!・・・セット!」
その中で部隊長らしきGのパイロットが声をあげた。薄い黒色のGに乗った男は“黒い風”の異名を取り北極圏では恐れられたGパイロットだ。
「どうすんのよ!?」
「・・・っ」
リナリーが左のモニターが砂嵐になったコクピットで通信を掛けて叫んだ。だが、向こうからは何も帰ってこない。いつもなら彼女からは何かしら作戦や不利な状況を打破する言葉が返ってくるはずだった。だが、味方を全て失い、残された2機にもエネルギーも残弾も残り少ない。殺されるのも時間の問題だった。
「聞いてるの!?ねえってば!!」
「分かってるわ!・・・でも・・・」
泣き出しそうな声が届いてくる。エリスは頭をフル回転させ、この状況を打破する方法を考えた。が、いい方法すら浮かばない。投降しても結局殺されてしまうだろう。彼女たちはどうしようもなかった。
「・・・レーダーに機影!!・・・機数2!!」
“黒い風”が攻撃命令を出そうとした瞬間だった。2機のツギハギだらけのGを取り囲むようにして張られた陣形の外からかなりの速度で2機のGが接近して来ていた。
「何だ!?」
「機種検索・・・ライブラリーにヒット!!・・・これは!?」
円形陣形の中に居た索敵用装備を施された50のパイロットが驚愕の声を上げた。それはありえないことだった。そのGは“味方”のGを次々に破壊しテ進行してきている。そのまま真っ直ぐ2機の傭兵のGに向かっていた。そして、その時はそれと逆方向で消える味方機の反応に気づかなかった。その声に“黒い風”も何事かと問いただした。
「状況を伝えろ!!」
「は、はい!!・・・接近する2機のGは、MK-1(エムケイワン)です!!」
「MK-1だと!?“無限”の部下どもか・・・」
“黒い風”は慌てるオペレーターからの通信を切ると、緊急で配信された情報を思い出していた。それは、世界政府軍にとって悪い知らせだった。

「“無限”及び、クーパー隊以下2名の消息不明。隊を脱走したと思われる」
その情報は一部の兵にのみ伝えられた。全体に伝わると混乱が起きかねない。“無限”を崇拝するものが多いからだ。彼が抜けたとなると、世界政府軍の全体の士気に関わることだった。
「よって、今後3名を脱走兵と扱う。発見次第消去せよ」
これを見た時“黒い風”は衝撃を受けた。だが、彼は“無限”が軍を抜けたことが当然のように思えた。彼は“無限”を知っていた。共に作戦を行ったこともあった。その時はまだ“無限”呼ばれていない頃だったが、その時からとんでもないパイロットだった。だが、“黒い風”は“無限”の中に闇を見たような気がした。

「・・・何をする気なのだ?」
「隊長!!MK-1は、“無限のクーパー”の・・・!!」
「ああ、やつらは敵だ」
“黒い風”の部下は彼らが軍を脱走したことを知らない。この状況で混乱するのも無理も無いことだった。“黒い風”は混乱が起きることを承知で味方に向かって全通信を掛けた。
「“無限”以下クーパー隊は軍を脱走した!!よって、今後やつ等は敵と判断する!・・・攻撃態勢を取れ!」
「マジ!?」
「・・・そんな・・・クーパーさんが!?」
「はぁ!?脱走!?・・・腰抜けか」
様々な声が“黒い風”に届いた。それを彼は一喝した。その声に皆が固まる。
「御託を言う暇があったら、やつ等を倒せ!!」
「りょ、了解!!」
2機のMK-1が来る方向に向かって4小隊が向かっていった。


「・・・手ごたえが無い」
「マサ、無駄に殺すんじゃない」
「仕方ないだろ、これは戦争だ」
マサは2機のグロウを同時に斬り倒して着地した。カズはスピードを上げマサのMK-1の横に付き、その動きを止めた。カズは急所は狙わず、ロングライフルで行動、攻撃手段だけを奪っていた。こんなに対照的な2人が同じ部隊に居るのは“無限”の成せる業だろうか。カズに止められたマサだったが、再びアスロート2機をブレードで葬った。彼はこんなところで止まるわけにはいかない。復讐を遂げるまで、マサには甘さは許されないからだ。
「で、“アイツ”はうまくやってるのか?」
「隊長が言ってるからな、大丈夫だろう」
「信用できんのかよ!?・・・アイツ、“アレ”なんだろ?」
マサはカズに別行動を取る“彼”のことを聞いた。コクピットの中で吐き捨てるようにマサは言う。マサは彼のことがどうも信用が出来なかった。クーパーがこの小隊の隊長に任命し、クーパーの命令で無いとあんなわけの分からない男とは組みたくは無い。それに、今は“アイツ”が隊長だ。
「腕は確かだ」
「どうだか?・・・使えねぇかもしれないだろ?」
「おしゃべりはここまでだ。・・・来たぞ!」
彼らの目の前に12機のGたちが迫って来ていた。


「邪魔が入ったな。こっちを片付けるぞ」
“黒い風”は2機のGに目をやった。2機ともさっきから動かない。
「くっ・・・!エリス!何とかして!!」
「・・・ごめんなさい」
「そんなこと言わないで!!あたしはずっと、信じてる!!これからも信じてるから!!」
弱気になったエリスをリナリーが震える声で一喝した。リナリーの目には涙が浮かんでいる。だが、この状況ではどうしようもなかった。エリスは通信用モニターに映るリナリーの顔を見た。涙は流していても必死に勇気付けようとしている顔だった。その顔を見て少しだけエリスの気が楽になったような気がした。
「リナリー!・・・どうせ死ぬんだったら、限界まで戦うわよ!」
「そうこなくっちゃ!」
エリスの声に反応し、リナリーのグロリアスは戦闘態勢を取った。それを“黒い風”が見てにやりと笑う。
「・・・まだやる気か。構わん、殺せ」

「・・・行くぞ」

“黒い風”の周りのGがライフルを放とうとした瞬間だった。そのGたちのライフルが突如切断され、機体が次々と崩れ去って行った。
「ちょっ!何なの!?・・・嘘っ!」
「何だ!?何が起きている!?」
何が起きているのか、皆分からなかった。“何か”が次々とGを戦闘不能にしていく。何処から攻撃されているのかすら分からなかった。
「・・・レーダーに反応は!?」
「うわっ!!・・・あ、え!・・・ありません!!」
慌てふためくレーダーオペレーターに舌打ちして、目の前の光景を睨んだ。何が起きているのかを見極めるためだった。その時“黒い風”は何かを見た。
「・・・ブレード?・・・不可視なのか?」
そして、遂に“それ”が正体を見せた。


「答えを見つけたのではなかったのか?」
「何!?」
「レッシュ君と共に戦うことが君の選んだ道なのではなかったのか?」
クーパーの驚くほど落ち着いた言葉が翼に突き刺さる。翼は攻撃する意思ありでも、クーパーは攻撃する意思が見られなかった。攻撃が当たらない。それがさらに翼の怒りを増大させた。
「アイツはバラッドを殺した!!・・・だから俺が倒す」
「今のは何だ?気まぐれか?」
「・・・んだと!?」
ブラック・バードのリニアライフルが火を噴いて、MU-GENを掠めた。確実に腕の上がっている翼にクーパーは少しだけ感心した。
「だが、わかってないようだな。君と彼で無いと“止められない”」
「言ってる意味がわからねぇんだよ!!」
翼は叫んでブラック・バードを旋回させ、再びMU-GENの方を向いた。クーパーそれに構わず静かに続けた。
「ここは退け。帰って冷静になれば見えるものもある」
「オイ!!待て!!」
クーパーはそう言うと静かに深い緑の目を閉じた。そして、機体を海面に向かって急降下させた。そのまま高い水柱を上げて地中海に潜って行った。それを見て、翼は舌打し、コクピットパネルに拳を振り下ろした。ブラック・バードの戦闘機形態では海への航行は不可能だ。MU-GENを追って潜水なんかしたらあっという間に浸水が始まってしまう。
「くそっ!!何なんだ・・・アイツは」
「ブラック・バード帰還願います」
「・・・了解した」
いつも絶妙なタイミングで帰還命令が掛かる。指示を出すのはブリッツェンだが、彼は状況判断能力に優れた男だ。正論を言っているためいつも翼は言いくるめられている感じがしていた。ここは素直に従うより他にない。
「・・・レッシュ」
翼はそっとその名前を口にしてジア・エータへと戻っていった。


「地中海に出ました」
「・・・警戒を続けて。私たちも出られるように準備するわよ」
「「了解!」」
桜は青年とビリシャに振り返って指示を出した。パイロットスーツ姿の桜が長い髪を揺らして歩いていく。その後に同じようにパイロットスーツ姿の青年とビリシャが続いて行く。桜の部隊が地中海を渡る大部隊の先陣をきっていた。
「あ、姉さん」
「どうしたの?」
桜は青年に呼び止められてくるっと振り返った。意識して無いのだが、その振り向き方がプロポーションと相まってファッションモデルのように見えた。青年の方を向いて腰に左手を添え、首を小さく傾げる。見慣れていても、なかなか体は慣れない。未だにドキドキする。
「あ・・・あの」
「ん?」
「あの・・・“あの人”ですが・・・」
青年は医務室に運ばれている重体の男性の状況を言い始めた。あの、ギア・ロッドが墜落していた戦場で桜が唯一見つけた生存者だった。桜が見つけたときは火傷、骨折と見るも無残な状態だったが、息はあったため、桜が救出を指示していた。
「まだ、身元が分かりません。現在も調査中です」
「そう・・・。容態はどうなの?」
「右足は義足を、右手首にも義手を、その他箇所もできるだけのことはするそうです」
「・・・助かるといいわね」
桜は伏目がちになって小さな声で言った。戦艦のジェネレーター音が響いて少しの間沈黙が流れたあと、桜が顔を上げて再び口を開いた。
「さ、行くわよ!」
「「了解!」」
3人は揃って、格納庫へと向かって行った。


それは“黒い風”目の前に現れた。突如現れたGに世界政府軍に混乱が起きる。
「な・・・!?」
「Gだ!!」
“黒い風”はそのGを睨んだ。銀色が輝く機体。見たこともない型だった。背中に背負ったいくつもの、長方形の盾のようなものが羽根のように展開し、両腕の横のところでスライドして止まった。まるでマントを羽織って居るようにも見える。
「大丈夫ですか?」
「・・・え?」
突如エリスとリナリーに通信が開いた。とても静かな声だった。この銀色のGのパイロットなのだろうか。2人が押し黙っているともう一度同じ問いかけが来た。
「大丈夫ですか?」
「あ・・・うん、何とか・・・」
はっとしてリナリーはその銀色のGのパイロットの問いかけに返事した。このGは敵なのだろうか味方なのだろうかよく分からないが、この状況では恐らく味方だろう。だが、エリスは違った。ヨーロッパエリアの傭兵にこんな機体に乗る傭兵は居ない。情報戦に精通している彼女だからこその答えだったが、リナリーと同じく助けが来たことにほっとした。この際援護してくれるならば誰でも構わなかった。
「じっとしていてください。私が片付けます」
「・・・あ、はい」
そう言うと銀色のGが目の前から消えた。そのことにエリスたちも“黒い風”部隊のメンバーも驚いた。一瞬にしてGが消えることはありえないことだった。再び見えない“何か”で次々とGの戦闘能力が奪われていく。
「隊長!!」
「ぐああ!!」
「・・・くっ!ステルスシステムなのか!?」
ステルスシステムはレーダーに映らないだけなのが普通とされている。だが、目の前で起きたことはありえないことだった。エリスたちと違って“黒い風”ははっきりと見ていた。銀色のGが消える瞬間だった。ノイズが走ったかと思うと、モニターからスッと消えた。目視不可能なステルスは技術的に不可能とされるが、現に目の前の“それ”は存在している。日々進歩するGの世界では古い考えは通用しない。
「・・・MK-1攻撃4小隊シグナルロスト!撃破され・・・」
それっきり索敵用Gからの通信が途絶えた。そのGがあった方向に目をやると、レーダーと脚部が膝下から切断され、地面に倒れこむ瞬間だった。その周りでは無茶苦茶に味方のGが射撃を繰り返し、同士討ちまで起こっている。
「ステルスじゃない!?・・・これは何なのだ!?」
“黒い風”はそのエリアから少しだけ距離を取って状況を冷静に見た。そして、銀色のGが消える瞬間、ノイズが走ったことに気づいた。
「カメラに直接働きかけるのか!?・・・これなら!」
“黒い風”はコクピットハッチを開放した。そこには羽根を広げた銀色のGが飛び回っていた。


「エリス!これって何!?」
「多分、ステルスだと思うけど・・・目視で見えないなんて・・・」
「分かるように言ってよ!」
考え込むエリスにリナリーが早口で言う。彼女はまた自分の中で考え込んでしまう悪い癖があった。そうなっては無口になってしまう。
「え・・・?ああ、ステルスの基本はレーダーに映らないだけなの」
「じゃあ、アレは何なの!?」
目の前で起きたのはありえないことだった。Gが一瞬にして消えるなんてことは。だが、日々進歩するGの世界では昨日までのことが古くなってしまう。どこかのG企業が新技術を開発したのだろうか。エリスは次々と倒れていくGを見て呟いた。
「でも・・・」
「でも?」
「これが現実なのよ」
その時、黒いGのコクピットハッチが開いた。


見える。
見えない敵が見えるという事。
状況は一気に逆転する。“黒い風”は大きく笑った。
「はははは!!!そういうことだったのか!!」
この銀色の機体の“ステルス”とはGのカメラに働きかけて、カメラ上から機体を消すと言うものだった。だが、人間の目視だと丸見えになってしまう。対G戦闘において有効だが、こうなってしまうとただのGに変わってしまう。“黒い風”は部隊メンバーにも呼びかけた。
「残った全機に告げる!!コクピットハッチを開けろ!“敵”が見えるぞ!」
すぐさま皆がコクピットハッチを開け始める。そこには銀色のGが居た。“黒い風”と同じように部隊メンバーも笑ってしまう。
「はっ・・・そういうことか」
「丸見えだぜ!!」
一斉に銀色のGへと攻撃が開始された。エリスたちは殆どの機体が同じ方向に向かって攻撃し始めたことに気づいた。皆同じようにコクピットハッチを開けている。そのことでエリスはあのステルス機の正体に気づいた。
「そうか!カメラに働きかけるのね!・・・こうすれば見える・・・はず!」
エリスはキーボードを弾いてカメラの設定を変えた。エリスのGの頭部には3種類のカメラが搭載されていた。そのうちの一つに暗視カメラがあった。昼間で使うと光が強すぎて見えないが光度を限界まで落として、設定を少しいじれば、見えない何かが高速で動いているのを捉えることができた。
「見えた!!」
「何が?」
「あの機体よ!・・・そっちじゃ無理だけど、こっちは見えてる!」
嬉しそうなエリスにちょっとムッとしてリナリーはシートにもたれ掛かった。自分だけ見れないのはちょっと置いて行かれた気分だった。
「ん?・・・気づいたみたいですね」
銀色のGのパイロットはヘルメットの中で小さく笑った。ライフルやマシンガンの銃弾が銀色の機体を掠める。彼は手を伸ばしてキーボードを弾く。そのスピードは尋常ではないスピードだった。そして、コンピューターには“LV-2”と表示された。
「見えてしまえばタダの目立ちまくるGでしかないみたいだな!」
“黒い風”は飛び上がって、何も無い場所でブレードを振ったその時だった。捉えたはずの銀色の機体はそこにはなかった。
「何!?・・・消えた!?どこだ!!?」
あたりを見回すが味方と2機の孤立したGしか見えない。“黒い風”は着地して背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
「馬鹿な・・・完全に消えただと・・・」
今度はとんでもないスピードで次々とGが倒され始めた。完全に見えなくなったことと、見えない敵に攻撃される恐怖で混乱が広がって行く。
「うわああああ・・・!」
「どこだ!?」
「やめろー!」
残されたGが“黒い風”ただ一人になったとき再び銀色のGは姿を現した。
「そんな馬鹿な・・・」
「最後です」
“黒い風”は銀色のGを睨みつけるとペダルを一気に踏み込んでそれに向かっていった。だが、また、銀色のGは姿を消し、ブレード攻撃が空を切った。そして、“黒い風”の背後に再び出現した。
「・・・馬鹿な・・・コイツ・・・」
ブレードが輝いて“黒い風”のGが真っ二つに切れ、炎を上げた。


「・・・37機撃破か。“黒い風”とか言うやつの部隊だろ?」
「北極圏では最強の部隊“だった”みたいだな」
「ちっ、結局美味しいトコ取りかよ」
雪が降りづいている。2人の息はとても白い。MK-1から降りてきたマサはカズに向かって頭の後ろで手を組んでぼやいた。自分たちは陽動で、“消えるG”の自分が突撃を仕掛けると言う作戦だった。少女たちの目の前には銀髪の青年が立っていた。エリスはまだ少し疑っていた。後ろの方にいる2人は“無限のクーパー”の部隊メンバーのはずだ。それが何故、同じ世界政府軍を倒して今ここにいるのかわからなかった。白い雪と息だけがあたりを埋める。彼女たちはファーの付いた分厚いダウンコートを着てはいるが、インナーはシャツ1枚に、片方はジーンズにスニーカー、片方はミニスカートのロングブーツだった。とてもこのエリアには不釣合いな格好をしている。どうやら強襲され、パイロットスーツに着替える暇も無かったようだ。
「とりあえず無事でよかったですね」
白いパイロットスーツ姿の銀髪の青年に笑いかけられたことで、エリスはそんなことはずべて吹き飛んでしまった。顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「あ・・・ありがとう」
「いえいえ、お礼には及びませんよ」
「でも、スゴイですね!これ、ステルス機なんですよね?」
照れながら御礼を言うエリスはその青年に笑顔で返されて更に赤くなってしまう。そんなエリスを尻目にリナリーはこの青年のGに興味深々だ。
「そうですよ。この機体は“ヴァリアルス”と言います」
「“ヴァリアルス”・・・?」
その名前を聞いてエリスは、はっとする。それは伝説クラスの機体の名前だったからだ。
「それって・・・“ルスシリーズ”の!!・・・こんな機体をどこで手に入れたんですか?」
「深い事情は聞かないでください・・・あ、申し遅れました」
真っ直ぐ突っ込んでくるエリスをその青年はそっと、制してお辞儀をして自己紹介を始めた。
「彼は新藤一射、その横の彼は神崎雅輝です。“カズ”と“マサ”です」
「どうも・・・」
「よろしく」
銀髪の青年が紹介すると、2人の青いパイロットスーツ姿の青年が2人の少女の前に近づいてきた。“カズ”と呼ばれた青年は握手を求めてきたが“マサ”と呼ばれた方は無愛想な感じだった。そのことにリナリーがちょっと引っかかった。無愛想なヤツが第一印象だった。
「エリス・ジュリオルドです」
「リナリー・フェイルよ!ありがとね」
「いえいえ、彼の命令ですから」
そう言ってカズは銀髪の青年の方を向いた。そして、彼はもう一度お辞儀をした。
「私は“J”。これからは君たちの力になるつもりです」

銀髪の青年は“J”と名乗った。深い緑の瞳がとても特徴的だった。
銀色のマントを羽織ったような機体が雪が積もりそれを反射して輝いて見えた。






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